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最近の傾向として、機械の高精度化により、バックラッシの小さい歯車の需要が増加しています。このバックラッシを小さくする方法を大きく分類すると、静的な方法と動的な方法の2つに分類されます。
静的な方法というのは、歯車対のバックラッシを小さく調節して、その位置に歯車を固定する方法です。
動的な方法というのは、バックラッシを除去する為の力を作用させることにより、常にバックラッシを零に保つようにする方法です。

（1）静的な方法(調整・固定方式)
この調整・固定方式には、基本的な2つの方法があります。それは、歯車を調整・固定する方法と、中心距離を調整・固定する方法であり、これらの組合せにより４通りの方法(ⅰ～ⅳ)が考えられます。

表4.2

		無	有
		中心距離調整
歯車調整	無	ⅰ	ⅲ
歯車調整	有	ⅱ	ⅳ

(ⅰ)ⅰの方法
歯車も中心距離も調整せず、固定したまま、バックラッシを小さくする方法です。
固定した中心距離において、バックラッシが小さくなるように歯車を製作します。

(ⅱ)ⅱの方法
歯車は調整可能な構造として、固定した中心距離で歯車をかみあわせた後、バックラッシが小さくなるよう歯車を調整してから、歯車を固定する方法です。
ここで歯車を調整するには、主に3つの方法が考えられます。

	①	歯車を2枚重ねにして、片方を回転方向にずらして調整する方法
	②	はすば歯車など、ねじれのある歯車を2枚に分割して製作し、片方を軸方向にずらして調整する方法
	③	かさ歯車とかテーパギヤなど、円すい形の歯車を軸方向にずらして調整する方法 (複リードウォームギヤもこれに分類されます。)

これら3つの方法を図4.7に示します。
①は回転移動式、②、③は平行移動式です。

①回転移動式	②平行移動式	③平行移動式

図4.7 歯車を調節・固定する方法

(ⅲ)ⅲの方法
歯車は調整なしで、中心距離を調整可能な構造として、バックラッシを調整した後、中心距離を固定する方法です。
この中心距離を調整する方法としては、平行移動式と回転移動式の2つの方法が考えられます。

	①平行移動式		歯車を中心距離が小さくなる方向に平行移動して、バックラッシを調整してから、中心距離を固定する方法です。
	②回転移動式		歯車の中心とは異なる、偏心した回転中心を持つ機構として、その偏心した回転中心を中心として歯車を回転させて、中心距離を調整してから、この中心距離を固定する方法です。偏心量の大小により、その構造も多少異なります。

これらの方法を図4.8に示します。

①平行移動式	②回転移動式

図4.8 中心距離を調節・固定する方法

(ⅳ)ⅳの方法
これは歯車の調整と中心距離の調整を併用する方法ですが、片方を調整することで充分なので、あまり使用されません。

（2）動的な方法(バックラッシ強制除去方式)
このバックラッシ強制除去方式の基本は(1)で述べた調整固定方式です。(1)の方式の調整を強制的に行うのがこの(2)の動的な方法です。この方式には、歯車によるバックラッシ強制除去方式と、中心距離によるバックラッシ強制除去方式の2つが考えられます。

(ⅰ)歯車によるバックラッシ強制除去方式
これは(1)のⅱの方法(図4.7)においてバネなどの力により、強制的にバックラッシを除去する方法です。

(ⅱ)中心距離によるバックラッシ強制除去方式
これは(1)のⅢの方法(図4.8)においてバネなどの力により、強制的にバックラッシを除去する方法です。
ここで、バネなどの強制力F の大きさは、歯に加わる力F 1と摩擦抵抗力F 2の和よりも大きいことが必要です。

F > F 1 + F 2

(4.19)

この強制力F は小さすぎれば、バックラッシを除去できません。また、大きすぎると、歯車に予圧がかかりすぎて、歯車の摩耗とか寿命などに悪い影響がでます。これら、バックラッシを強制的に除去する歯車の強度計算においては、この予圧を考慮して設計する必要があります。

（3）複リードウォームギヤ
複リードウォームギヤというのは、バックラッシを小さくする方法の1つで、ホブ盤の親ウォームギヤなど精度を要する部分に使われています。
図4.9には、複リードウォームを示します。

図4.9 複リードウォームギヤの原理

この複リードウォームギヤでは、左歯面のピッチPL と右歯面のピッチPR は等しくなく、この例ではPR >PL の関係になっています。これとかみあうウォームホイールは、もちろん複リードウォームに合わせて左右歯面のピッチをPL 、PR に歯切りします。
この場合、図のように右に行くにしたがって歯厚は厚くなりますから、ウォームを軸方向に移動することによって、バックラッシを正確に調整することができます。